私の祖父母は、長寿だった。長生きをして、それぞれの病で人生に「さようなら」をしていった。共通しているのは、自宅で家族と一緒に過ごして最期を迎えている点だ。
 現代なら入院し、治療するような病でも、自宅で、往診の医師の治療を受けていた。往診の医師は専門医ではなく、内科を中心として何でも対応するような町医者だった。したがって、現代の延命治療などの処置はなかった。
 「介護保険」のない時代だし、だいたいが「介護」という言葉を聞いたことがなく、治る見込みのない老人を家で看病するのは、家族にとって当たり前のことだった。病人の食事や入浴などは、それなりに工夫してそれぞれの家庭で、家族がやっていた。一家には三世代の家族がおり、人数も少なくとも四、五人はいた。
 そして、そのような最期の迎え方を、前の世代もその前の世代もやっており、それを子どもの頃から経験していた。私の祖父母の世代である明治時代生まれで長生きした人は、戦後の昭和を生きたので、町医者の往診という医療的なケアを受けられただけ、前の世代よりも医学の進歩の恩恵にあずかっていたといえる。

 私の親の世代、大正、昭和の戦前生まれになると、「さようなら」の方式が激変したと感じる。