犬を買った。
 子犬を買って、飼い始めた。
 以前に犬を飼っていた私と同年齢の人たちは、異口同音に「今からだと犬の寿命と自分の寿命が同じくらいになる。犬が元気なうちに飼い主の方が世話をされるようになるかもしない。ペットを遺すのは身内には迷惑な話だ」として、新しく犬を飼うことをしない。
 私もそう思っていた。

 だが、漠然とではなく、はっきりとその時期を迎えると、考え方が変わってきた。その時期とは、身体が確実に衰えていく時期であり、いつ余命宣告を受けても不思議ではない時期である。
 私の場合は、犬の世話をできる時間は長くてあと十数年であろう。短ければ、今日一日であろう。どう思案し、シミュレーションしても、将来のことはわからない。四、五十歳台の頃よりは将来は短いということだけが明確だ。
 また、身内に迷惑をかけないような身辺の整理は心がけとして美しいと思うし、そうしたいと思う。しかし、老いていけば、どんなに本人が頑張っても、周囲の助けを借りなければならない。また、持ち物や家や墓などを身内の負担にならないようにするには、全部をきれいさっぱり処分することが結論だろう。だが、そういう処分の時期と、自分の寿命を一致させることは不可能だ。
 そう考えると、自分ができる範囲の暮らしを短いサイクルで続けることが肝心だと思えてきた。

 犬を育てたい気持ちと、新しくきた子犬とのであいを大切することにした。ペットショップの展示犬の中から選んだのであるが、商品を選ぶのとは全く違う。みなさんがよく言う、「子犬と私の目があった」のである。

 子犬中心の暮らしが始まっている。私の部屋は、ケージが占領し、一日に何度も子犬のうんこの始末をしている。